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フジロック備忘録:5

更新日:2019年10月2日

フジロックは終わってしまったが、フジロックはまだ終わってない。

おれはゲートをくぐり、来年の開催日を確認して三国屋までの道を歩いていた。歩きながらマツバラ師匠とユウコさんにケミカル・ブラザーズがなぜ心を打つかを一所懸命プレゼンしていた。ハイになるとお喋りになる癖がある。おれは未だに絶好調だった。



腹が減っていたので、途中の土産屋で搾りたてのマンゴージュースやパクチー山盛りのピザなどを仕入れた。こんなものを買ってしまうのはまだハイである証拠だ。前日の雨に打たれてシワシワになった千円札2枚を「濡れちゃっててすみません」と差し出し、おれの苗場での買い物は終わった。後ろに並んだトガちゃんも同じくパクチーピザを買い、店のお姉さんから「もう店をしまうから」とパクチーの束を貰っていた。おれにはくれなかったのに何故!と思ったが、やはり濡れた千円札がダメだったのか。まあいい、どうせトガちゃんが貰ったんだし。トガちゃんが手に持っているパクチーをむしって食べながら三国屋までの道を歩いた。


明日は7時出発の予定だが、そんな事は関係ない。これからミクニーズのベストアクト会議である。しかし、その前に風呂だ。おれたちは各自めいめい、風呂に向かった。まずはおれとトガちゃん、REDさんだったと思う。三国屋の洗い場にはシャワーが6つあり、1つは壊れていて使えない。REDさんが「そこのが使えないんだよ」と教えてくれた。おれはへえ、ロシアン・ルーレットだな、と思った。幸い洗い場はそれほど混んではいなかった。おれは熱すぎる湯船にプカプカと漬かり、1分持たずに風呂場を脱出した。入れ替わりでマツバラ師匠がやってきた。洗い場は無人だったが、師匠は見事にハズレのシャワーを引き当てた。


しかし、悲劇はまだ終わらない。


部屋に戻るとトガちゃんが「タオル間違えちゃったかも」と言い出したのだ。どうやら間違えてマツバラ師匠のタオルを使ってしまったらしい。「なんかフカフカだった」と。「おれのはボロボロのカピカピのやつだったはずだ」「なんなら今回使ってもう捨てよっかな、ぐらいのタオルだった」と。事実なら、大惨事だ。


実はフジロック開催の前週、倉敷の焼鳥屋にて開催されたミクニーズ決起集会でみんなに相談した事がある。「荷物がかさばらないようにスポーツタオルを買ったんすけど、確かに水は吸うけど、全然使った感がないんすよね!」これに一番大きく共感してくれたのがマツバラ師匠、その人だった。おれは師匠の「うなずき」を得て3,000円ぐらいするフッカフカの、だけど超かさばる今治タオルを買ったのだった。スポーツタオルは置いていった。最後に痛い出費ではあったが、おれの選択に間違いはなく、風呂上りのフカフカのタオルは一日の疲れを吹き飛ばす、これぞフジロック必携のアイテムであった。


そしてマツバラ師匠も、おれの相談を受けてから熟慮を重ね「ここ一番のタオル」を用意してきたらしい事を聞いていた。その渾身のタオル、最終日を締めくくる大一番のタオルを、なんとトガちゃんに使われてしまったのだ。期待を胸に膨らませて手に取ったフカフカであるはずのタオルが、ボロボロのカピカピだった……!その心境はいかばかりか。これは大事件だ。同じバンドメンバーとは言え、大先輩に対するあまりの仕打ちに、おれとREDさんは笑いを堪えることが出来なかった。トガちゃんも笑っていた。それは師匠が憮然とした顔で「なんか違うと思った」と言いながら部屋に戻ってくるまで続いた。


その後ミクニーズでベストアクト会議が3時過ぎまで行われたが、タオル・クライシスのインパクトが強すぎて実はよく覚えていない。この4時間後、苗場を出発し13時間の旅が始まるのだった。そこでも数々のドラマが繰り広げられたのだが、キリがないのでフジロック・レポートは一旦終わりにしようと思う。


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