フジロック備忘録:4

とうとう最終日だ。


今日のラインナップはハイエイタス・カイヨーテ、KONDO-IMA21、KOHH、平沢進、ジェイムス・ブレイク、マツバラ師匠劇押しのザ・キュアーと見たいアーティストが目白押しだ。前日に温存策をとったせいか、ただ単にハイになっていただけか、体調はいい。ブヨの毒気も感じない。まず起きて最初にしたこと。それはトレッキングブーツの乾き具合の確認だ。濡れた靴にホッカイロをぶち込むというアイデアはユウシ君に教えて貰った。



しかし、苗場の雨は伊達じゃなかった。前日グショグショになるまで戦い敗れたブーツは、まだ乾いていなかったのだ。そこでおれは考えた。「浴場のドライヤーで乾かそう」と。着替えを済ませ、無人の浴場に向かう。そしてブーツにドライヤーの風を当てた。無心でだ。シャンプーではなく化学繊維の匂いがした。ああ、おれは苗場まで来て、地下にある風呂場の脱衣場のドライヤーで靴かわかしてるぜ……!


15分ぐらい経っただろうか。ブーツは完全復活した。前日、おれの愚かなチョイスによって完全水没したコロンビアのナイロンセットアップはカラカラに乾いていた。撥水機能しかないアイテムではあるが、しかし速乾性が売りでもあったのだ。何だか今日、行けそうな気がする。あると思います。


ここまで来ると「意外とおれのフジロック・サバイブは間違っていなかったんじゃなかったのか」と思えてくるから不思議だ。マツバラ師匠からも「翌日に装備を完全復活させるのは偉い」とのお墨付きを頂いた。それが呆れだったのか皮肉だったのか、おれは考えない。敢えて考えない。やはり、純粋な誉め言葉だろう。


基地にイスを設置し、おれの3日目が始まった。結果から申し上げると、おれはこの日一度もイスに座らなかった。


まずはハイエイタス・カイヨーテで遅めのウォーミング・アップ。横ノリのリズムが心地よい。ほどほど最前で見てオーストラリアの女の子とインスタを交換したりしつつ、ダッシュでカフェ・ド・パリのKONDO-IMAへ。ここでは全力で踊った。気分は完全にハイだった。KONDO-IMAが終わり、テントの中で放心していると、キャバレーの呼び込みみたいなアナウンスが流れてきた。「まだ帰らないで下さーい。これからポールダンスが始まりまーす」


そこには何故かREDさんとマツバラ師匠がいた。あ…ありのまま、いま起こった事を話すぜ!気が付いたら、おれはポールダンスの舞台に連れ出されていたんだ。そして訳の分からないまま口移しで千円札を女の子に渡しテキーラを飲まされた。あれはショットで3杯分はあった。な…何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった…。千円札はREDさんが出してくれた。ハイというのは恐ろしいもので、普段なら絶対飲めない量のテキーラがスルスルと入り、おれの意識は更なる高みへと登っていった。


その後1時間、KOHHが始まるまでの記憶がない。ミクニーズとも合流していない。気が付くとポケットに「フジロック特製の燻製塩」が入っていた。謎だ。苗場のような山奥ではこのような超常現象が時おり起きる。


KOHHの最高なステージをモッシュで過ごしたら、次はもう一人の師匠、平沢進だ。40分前にレッド・マーキーに来たというのに、ものすごい人だ。出音が完全フロア仕様だったので、ここでも踊る。ハイになったおれに体力の限界はない。心なしか肺が痛い。心配ない。あとは灰になるだけだ。気がつけば、おれはこの日何も食べていない。テキーラとカフェオレとミネラルウォーターしか摂取していない。


一息つこうと基地の方に歩いていったら、キュアーの演奏が聞こえた。少年のようなロバート・スミスの歌声が沁みわたる。決して美しいとはいえない…おれが知っている80年代のジャケットに映っている美青年はそこにはいなかったが、全身から耽美さと内気さ…つまり、愛しさと切なさと心強さを感じることが出来た。おれはこの時、はじめてキュアーの良さを知った。


キュアーをしばらく見た後、歩きながらジェイムス・ブレイクのステージに向かう。「聴くと寝る」と言われていたジェイムスだが、この日のセットは思いのほかフロア寄りで、その心地よい4つ打ちのリズムにまたも体が動いてしまった。気がつけば24時だ。


さすがにおれも体力が尽き、そろそろ撤収かという気持ちになった。なんだか猛烈に腹も減ってきたしな。ミクニーズと合流し、ゲートの前で写真を撮って三国屋へ。だが、フジロックの夜は終わらない。


#Fujirockfestival2019

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