プロズート・ポモドーロ・リターンズ
何を言ってるのかちょっと分からないと思うが、半年ぐらい前に作った「マフィアのレシピのパスタ」をまた作ったんだ。まあね、こないだ作ったのも普通に美味かったよ。うん。だがしかし。正月に寝転びながら「グッド・フェローズ」を観てて思った。「あのパスタ、赤みが足りてなかったんじゃないか」と。

手がかりとなる情報はこれだけだ。
〝まずは、フライパンにオリーブオイルをひいて、トマトを入れる。そこに刻んだタマネギを、そしてニンニク、生ハムを投下。ニンニクは水分のあるトマトの後に入れるのがコツだ。フライパンで直接炒めて黒こげになってしまうのを防ぐためにな。トマトソースー隠し味には、オレガノ。そしてパセリとバジル。ナイフを使わず、手でちぎってやる。そして水を加えながら焦げないようにソースをかき回して、最後にひとつまみの塩をふりかけて終了だ。あとは、茹で上がったスパゲッティに絡めるだけ。余ったソースは、パンにつけて食う。20分で完了のお手軽レシピだ。ソーシャルクラブではお馴染みの料理っていうわけさ。〟 ジミー・ナップ・ナポリおじさん、レシピは教えてくれても分量は教えてくれない。さすがマフィアは厳しい。だからおれも前回は適当な感じで作ったんだけど、もしかしたらトマトが足りてなかった疑いが濃厚だ。そして玉ねぎは多すぎた。結果としてサルサっぽい味になったんだけれども、それはそれで良しとして、おれはマフィアが食べてた版のパスタが食いたいんだよ。
そんな訳でリベンジとなった次第だ。トマトも赤めのやつを選んだ。小ぶりだが色鮮やかな熊本産。6個で100円は安い。これでダメなら細長いミニトマトを試すしかない。あれは皮むきが面倒だ。こいつが気を失う寸前まで、つまり赤みがしっかり出るところまで弱火で痛めつけたい所だが、マフィア飯ならば「サッと作ってスッと出す」が基本なので、時間をかけて煮込んだりしてはいけない。
他の材料はほぼ同じ。生ハムがちょっとグレードアップした。とはいっても、これは正月の頂き物の残存物だ。これが赤みを出すかと思いきや、火を通すと普通のハムの色になる。ちょっとでも赤を出せると思ったそこの君、人生とはそういうものだ。前回はイタリアンパセリを使ったが今回は普通のパセリ。特に意味はない。
トマトの赤みを出すためにはローリエがいいよ!という話をどっかで聞いたので入れようかどうか直前まで迷ったが見送った。レシピに書いてないからだ。後、味が変わる。劇的に変わる。隠し味はオレガノのみで勝負だ。チリペッパー?そんなものは言語道断だ。
皿も大事だな。インスタ映えという言葉があるように、人間はとにかく見た目に弱い。これだけでフォロワーが2割増える。だから、器は黒だ。なんとなくマフィアっぽいし、赤映えする。これでダメなら補色であるグリーンの皿を買うところからスタートさせなければならない。
さあできた。まあレシピ自体は簡単なんだよな。材料費も手間もかからない、いわゆる普段メシってやつだ。うっかり焦げ付かせたりしなければ、不味くなりようがない。
そして最後の仕上げはPhotoshopだ。究極これでどうとでもなる。知ってたかい?おれはプロのデザイナー、そしてカメラマンだ。今までの拘りがこの一文で全て台無しに。いやいや、そんなことはない。おれは基本的に優しい男。料理にはリスペクトがある。ツヤを出すためにロウを塗ったり、ドライアイスで湯気を出すような無粋な演出をしたりはしない。あくまでも味付け程度のレタッチだ。どちらにせよ、食うのはおれだ。
できた。完全にモノにした。赤い、赤いよ。これはもうグッド・フェローズだろう。Photoshop要らなかった。プロズート・ポモドーロ・リターンズ。これにて完結だ。うまいよ。驚きのないうまさ。「ああ、トマトと玉ねぎとニンニクの味がする……!!」ってなる。でも、その最上級だから。しかも20分でできる。無印良品のパスタ・シーズニングより15分遅いぐらいだ。その15分を惜しまない人はやってみてくれ。

参考:HEAPS | マフィア幹部の息子が教えてくれる食の掟「トマトソースの隠し味とテーブルマナー(女の話は持ち込むな)等」
http://heapsmag.com/tony-nap-napoli-wiseguy-cooking-tomato-sauce-italian-food-culture